賑 や か な さ む け

柴田有理(しばたあり)ブログ

家庭

邦衛が叫んでいるところで母が帰ってきた。

大音量で聞いていたから下げた。

田中邦衛大滝秀治が若くして迫真であるのがつらくて嗚咽して見ていたし、

矢作(おぎやはぎ)似のドメスティックインテリジェンスについても嗚咽して見ていたし、

片桐はいりのように黒ジャンパー美人が鋭く生活しているのを見守る

寅さん似が、頼む、走ってくれというとこで走ったし、

末っ子の顔が不遇でなんか知り合いかと思うし、

死んだ秀治のメガネと釣りざおが追いはぎにあいそうになって

矢作と秀治の息子(小木ではない)はふたりして

賛成できない思想に向かって密接せずにあぐらをかいて、

バナナを食っていた。

邦衛に矢作が、

兄さんはなんで自分で分からないんだ、兄さんがカネカネ言うのと
母さんが今際の際に言った「金」は違うのに、
兄さんにも母さんから受け継いだ美しさがあるのを
なぜ自分で知らない、
僕は、姉さんが被爆者・長身の美しき鉄男と交際するにあたって、
五体不満足の子供が生まれる可能性は99%
無い
ことを何冊にも渡って調べた、
無いし、
もしあっても、
普通に生まれても生きられない奴は
寿命までで死ぬんだ、

邦衛も邦衛で、
坊、大学行ってくれ
大学行ってくれ、
坊、頼むから大学行って卒業してくれ、
たった4年大学に行けなかったせいで
10年20年かからないと一級にはなれない、
もし下請けやって大けがしたら数万円でさよならされる、
そして女性に
あなたとはすぐにはシステムキッチン持てない、
今だめだから、だめよね
なんて、
お前にはそんな思いさせない、
坊、
大学行け。
頭おかしくなってでも行け。

となにかクリームまみれ
(末っ子の不合格をねぎらうパーティーに出されたケーキ?)
の邦衛が言って

末っ子は
僕を犬や猫のように管理する大兄へ、
お金を投げ返す。

私は映画を見ている間
矢作似が映っているテレビ画面を触りに行ったりして過ごし、

これを放送している人たち(山田洋次など)
は有難し。

この時間テレビを見れる若い人となると、
社会生活していない人、
それらに向けて放送しているとなると、

こたつの位置をテレビ側へ前にずらして
見入った。

母は私が映画を見ている場から離れると少し楽だったと思う、

買い物に出かけた。

私はくたくたで、
母曰く
ぼろぼろ、
シャビー。

仮眠に入る。
南方の川沿いのビジネスホテルの場所が

またしても分からなくなり、

夢に何度も出てくる山ちゃんとか銀ちゃんみたいな名前の

売店

が今日もやっぱり在庫薄。

店員が作ったドイツパンなのか、高値。

携帯で電話した知り合いは

現実通りに微妙に遠くに住む人で、

助けてくれたのは

はるか岩手から車で駆けつけた父だ

私は「明日の夜、家に着く予定だから」

と言って父を車で岩手まで帰してしまう。

ビジネスホテルに転がり込むと、

床にいくつも

輪が投射され、

間に合わないと周りに言われたけれど

言われ続けたこの五年、

いや、

そのとき次の輪まで待てと言われたけれども

間に合って輪に駆け込むと


 急降下、

 と同時に歌舞伎のようにせり上がりに乗って、

 バトル筒に登り出る。

 私はホイットニーヒューストンになっている。

 男性ラッパーか何かと

 バトル筒でディスり合う対決。

 私はチェックのワンピ―スで、わきのチャックが開いている。

 相手の黒人男性歌手が

 見る人が見れば分かる名脇役にきりかわって

 どこで何役のバイプレイヤーだったか

 思い出せなくて




目が覚めた。

寝汗。


母に爆音で邦衛聞いててごめんと言いそびれて
乾きが半端なタオルをたたんだ。

皿を洗うと
文章をキーボードで打ってもいいと思えて、

このように打った。